はじめに
近年の注文住宅で人気が高まっている「平屋」。階段がなく、生活動線がシンプルで、将来にわたって暮らしやすいのが魅力です。その平屋と相性が良いとされるのが フルオープンサッシ。リビングと庭やデッキを一体化させ、開放感のある空間をつくることができます。
しかし、「本当に必要なのか?」「費用に見合うのか?」と迷う人も少なくありません。ここでは、フルオープンサッシを平屋に採用するメリットとデメリット、費用相場、後悔しないためのポイントを整理して解説します。
フルオープンサッシとは?
通常の引き違い窓と異なり、開口部を壁いっぱいに解放できるサッシのことを指します。代表的なのは折れ戸式や引き込み式。
- 折れ戸式:複数のガラス戸を左右に折りたたんで開放
- 引き込み式:サッシが壁の中に引き込まれ、開口部にフレームが残らない
いずれも、開け放てば リビングと庭が一体化し、平屋のメリットである「庭との距離の近さ」を最大限活かせます。
平屋×フルオープンサッシのメリット
1. 圧倒的な開放感
平屋はワンフロアで天井を高く取りやすく、サッシを大開口にすることでより広がりを実感できます。
2. 庭やデッキとの一体利用
- 子どもの遊び場をリビングから見守れる
- デッキを第二のリビングとして活用
- BBQやアウトドアリビングに最適
3. 採光と通風の効率アップ
大開口は光をたっぷり取り入れると同時に、風通しも確保。特に平屋は風が抜けやすく、自然換気が効果的です。
平屋に導入する際のデメリット・注意点
1. 費用が高い
フルオープンサッシは通常の窓に比べて価格が高め。平屋は窓の数が多くなりがちなので、採用箇所を絞らないとコストが膨らみます。
表:フルオープンサッシと一般的な窓の費用目安
項目 | 一般的な引き違い窓 | フルオープンサッシ |
---|---|---|
製品価格 | 10〜20万円程度 | 40〜100万円程度 |
施工費 | 3〜7万円 | 10〜30万円 |
合計 | 約15〜25万円 | 約50〜120万円 |
2. 断熱性能の低下
大きなガラス面は熱の出入りが大きく、夏の暑さや冬の寒さが室内環境に影響します。
→ Low-E複層ガラスやトリプルガラス、外付けシェードを組み合わせることで性能を確保できます。
3. 防犯リスク
開口部が大きい分、防犯ガラスや多点ロックなどの対策が必須。
4. メンテナンス性
可動部が多いため、戸車やレールの清掃・調整が必要になります。
後悔しやすいパターン
- 南向きに大開口を設けすぎた
夏場の日射が強すぎて冷房効率が悪化。 - 家具配置を考えずに設計
大窓の前にソファを置けず、レイアウトに困る。 - 使わないまま閉めっぱなし
「開け放つ機会が少ない」と感じる人も。
失敗しないためのポイント
採用する場所を絞る
平屋だからといって全室に設ける必要はありません。
→ リビング・ダイニングなど家族が集まる場所に限定するのがおすすめ。
外構とセットで考える
フルオープンサッシは「外の景色」も重要。庭やデッキのデザインを合わせて計画しましょう。
断熱・遮蔽の工夫を忘れない
- Low-Eガラス
- 外付けブラインド
- 深い庇や植栽による日射調整
平屋+フルオープンサッシの事例イメージ

シンプルな平屋の間取りでも、サッシを開け放つとリビングと中庭が一体化し、延床面積以上の広がりを感じられます。
まとめ
平屋にフルオープンサッシを採用するかどうかは、暮らし方と費用のバランスで決まります。
- 開放感と庭との一体感は大きな魅力
- その反面、費用・断熱・防犯には注意が必要
- 採用箇所を絞り、外構計画とセットで考えることが成功の秘訣
「平屋=庭との距離が近い」という強みを活かすなら、フルオープンサッシは非常に有効な選択肢です。ただし“やみくもに大きな窓を付ける”のではなく、家族の暮らしにフィットする場所に取り入れることが、後悔しない家づくりにつながります。